「建築」という言葉は、普段何気なく使っていますが、その意味を深く考えたことはありますか? 実は、「建築」はただ単に建物を建てることとは異なります。
今回は、建築の語源から紐解き、建物を超えた「建築」の本質に迫ります。
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建築の語源 – 「はじまりの工匠」
「建築」の語源は、古代ギリシャ語の “arkhitektonikē teknē” (アルキテクトニケー・テクネー) に遡ります。
これは “arkhitekton” (アルキテクトン = 建築家) の技という意味で、 “arkhitekton” は “arkhē” (アルケー = はじまり) + “tektōn” (テクトン = 工匠) から成り立っています。
つまり、建築家は “はじまりの工匠” であり、世界の成り立ちを根本原理から理解し、その一部となる建物を創造することに責任を持つ存在なのです。
建築は「世界の原理」を体現する
古代ギリシャ人にとって、神殿は世界の原理、その美しさ、完璧さを体現するものでした。建築家は、混沌とした社会に、世界の秩序を示す形を与える役割を担っていたのです。
現代においても、建築は単に住みやすい空間を作るだけでなく、その時代や社会の思想や価値観を反映 し、新たな世界の構築を目指しています。
例えば、情報技術分野でよく使われる「アーキテクチャ」という言葉。システムの原理や設計思想を指しますが、これはまさに建築が持つ 「世界の原理」 を捉える概念に通じるものがあります。
棚田にも「アーキテクチャ」がある?
建築の概念は、建物だけに留まりません。例えば、日本の美しい棚田。
棚田は、(1) 水平面を最大化しながら、(2) 人の移動を考慮し、(3) 水の流れを巧みに制御するという、全体を貫くシステムによって成り立っています。
これはまさに、部分と全体の関係、全体を貫くシステム、つまり**「棚田のアーキテクチャ」** と呼ぶことができるでしょう。
このように、「建築」はあらゆるモノゴト、風景の中に存在する 「原理」 を見出す視点を与えてくれるのです。
建築と建物の決定的な違い – それは「数えられるか」
英語では、建物は “building”、建築は “architecture” と表現されます。
“building” は具体的な建造物を指し、複数形 “buildings” が存在します。つまり、 “building” は数えられるモノ です。
一方、”architecture” は 「建築という概念」 を指し、複数形はありません。数えられない のです。
例えば、「バロック建築」は “Baroque Architecture” と表現されますが、これは17世紀のヨーロッパにおける建築様式、あるいはその様式を共有する建物の集合体を指し、特定の建物を指すのではありません。
つまり、“building” は具体的なモノ、“architecture” は抽象的な概念 と捉えることができます。
建築は芸術であり、工学でもある
建築は、一般的に「芸術」と「工学」の両方の側面を持つと言われています。
- 芸術としての建築:
空間を媒体として、美しさや感動、思想や理念を表現する。 - 工学としての建築:
物理法則や材料特性を理解し、安全で機能的な空間を構築する。
建築は、この2つの要素が融合することで、初めて成り立つと言えるでしょう。
建築を学ぶということ
建築を学ぶということは、単に建物を設計する技術を身につけるだけでなく、世界の成り立ちを理解し、新たな世界を創造する ための思考力を養うことでもあります。
建築を通して、私たちは世界の「アーキテクチャ」を読み解き、より良い未来を築き上げていくことができるのです。