二級建築士試験では、建物の安全に関する知識が問われます。中でも、火災などの災害発生時に人命を守る「避難」に関する問題は頻出テーマです。
今回は、避難経路の確保において重要な役割を果たす 「非常用エレベーター」 と 「非常用進入口」 について、複雑な設置基準を分かりやすく整理し、試験対策としてどのように学習を進めればよいか解説していきます。
Contents
なぜ非常用エレベーターと非常用進入口が必要なの?
高層建築物において、火災などの災害が発生した場合、階段による避難は困難を極めます。
そのため、消防隊が迅速に上層階へ到達し、消火活動や救助活動を行うための設備として、 非常用エレベーター が設置されています。
また、はしご車が届かない高層階へ消防隊が進入するための設備として、 非常用進入口 が設置されています。
1. 非常用エレベーター:消防隊の活動を支援! (法34条の2)
設置基準
- 高さ: 高さが31mを超える建築物には、非常用エレベーターを設置しなければなりません。
- 構造: 非常用エレベーターは、火災時にも一定時間使用できるよう、耐火構造の昇降路や防火戸などを備えた、特別な構造が求められます。
- 予備電源: 停電時でも使用できるよう、予備電源を備えなければなりません。
- 排煙設備: 煙の充満を防ぐため、排煙設備を設ける必要があります。
- 避難階への停止: 非常用エレベーターは、全ての避難階に停止できる構造である必要があります。
試験対策ポイント
- 非常用エレベーターの設置基準は、高さ31mを基準として、構造、設備など、様々な項目について細かく定められています。
- 試験では、これらの基準を理解しているかどうかを問う問題が出題されることが多いので、法令集を参考にしながら、しっかりと内容を理解しておきましょう。
2. 非常用進入口:消防隊の進入経路を確保! (令126条の6)
設置基準
- 高さ: 高さが31mを超える部分に3階以上の階がある建築物には、非常用進入口を設けなければなりません。
- 大きさ: 非常用進入口は、直径1.7m以上の円が内接する大きさ、または縦0.75m以上、横1.5m以上の大きさが必要です。
- 間隔: 非常用進入口は、水平距離で40m以下の間隔で設けなければなりません。
- 構造: 非常用進入口は、消防隊が容易に進入できる構造である必要があります。
試験対策ポイント
- 非常用進入口の設置基準は、非常用エレベーターと同様に、高さ31mを基準として、大きさ、間隔、構造などについて細かく定められています。
- 試験では、これらの基準を理解しているかどうかを問う問題が出題されることがあるので、法令集を参考にしながら、しっかりと内容を理解しておきましょう。
3. 非常用エレベーターと非常用進入口の設置が免除されるケース
(1) 非常用エレベーターの設置免除 (令129条の13)
以下のいずれかの条件を満たす建築物には、非常用エレベーターを設置する必要はありません。
- 高さが31mを超える部分に、昇降機機械室以外の機械室、または倉庫(不燃材料で造られ、かつ、火災の発生のおそれがないものに限る)のみを設ける場合
- 高さが31mを超える部分の階数が4階以下の場合
- 高さが31mを超える部分に機械室、工場、倉庫などを設け、かつ、主要構造部が耐火構造で、かつ、内装の仕上げおよび下地が不燃材料である場合
(2) 非常用進入口の設置免除 (令126条の6)
- 非常用エレベーターが設置されている場合
- 道路に面する外壁面に、直径1.7m以上の円が内接する大きさ、または縦0.75m以上、横1.5m以上の大きさの窓を、10m以下の間隔で設け、かつ、その窓から容易に屋内へ入れる構造である場合
- 吹き抜け等がある場合
- 特定用途の建築物:
- 令129条の13に規定する非常用エレベーターの設置が免除される建築物
- 既存不適格建築物:
- 高さが31mを超える既存不適格建築物で、増築部分の高さが1m以下、かつ、増築部分の床面積の合計が既存部分の延べ面積の1/2以下の場合
試験対策ポイント
- 非常用エレベーターと非常用進入口の設置が免除されるケースは、試験でよく問われます。
- 免除規定の条件をしっかりと理解し、適用されるかどうかを正しく判断できるようにしておきましょう。
4. 非常用エレベーターの乗降ロビー (令129条の13)
構造基準
- 耐火構造: 非常用エレベーターの乗降ロビーは、耐火構造でなければなりません。
- 内装制限: 仕上げおよび下地ともに不燃材料とする必要があります。
- 開口部:
- 乗降ロビーは、原則として、各階とも屋内と接続する必要があります。
- 屋外に面する壁に開口部を設ける場合は、防火設備で閉鎖できる構造にする必要があります。
- 予備電源: 停電時でも照明が確保できるよう、予備電源を備えなければなりません。
- 面積: 1基の非常用エレベーターにつき、10㎡以上の床面積を確保する必要があります。
- バルコニー: 乗降ロビーには、バルコニーを設けることができます。
試験対策ポイント
- 非常用エレベーターの乗降ロビーに関する規定は、構造、内装、開口部、設備など、様々な項目について細かく定められています。
- 試験では、これらの基準を理解しているかどうかを問う問題が出題されることが多いので、法令集を参考にしながら、しっかりと内容を理解しておきましょう。
まとめ|非常用エレベーターと非常用進入口をマスターしよう!
非常用エレベーターと非常用進入口は、高層建築物の安全性を確保するために非常に重要な設備です。
これらの設備に関する規定は複雑ですが、試験対策としては、法令集を参考にしながら、設置基準、構造基準、免除規定などをしっかりと理解しておくことが重要です。
過去問を繰り返し解くことで、知識の定着を図り、試験本番で落ち着いて解答できる力を養いましょう。