二級建築士試験では、建物の避難経路設計に関する問題が頻出します。
特に、「直通階段」と「歩行距離」は、避難の安全性を確保する上で重要な要素であり、複雑な規定が多いことから、多くの受験生を悩ませるテーマとなっています。
今回は、直通階段と歩行距離に関する規定を、具体例を交えながら分かりやすく整理し、試験対策としてどのように学習を進めればよいか解説していきます。
Contents
直通階段とは?
直通階段とは、その名の通り、ある階から避難階まで直接つながっている階段のことです。
火災などの災害発生時、避難階へスムーズに避難できるよう、建築基準法では、特定の建築物に対して直通階段の設置を義務付けています。
直通階段の設置基準|用途と規模、そして歩行距離!
直通階段の設置基準は、以下の3つの要素によって決まります。
- 用途: 劇場、映画館、百貨店、病院、ホテル、共同住宅など、不特定多数の人が出入りする建築物 (法2条2号、別表1) は、用途によって直通階段の設置が義務付けられています。
- 規模: 階数や床面積が一定以上になると、用途に関わらず、直通階段の設置が必要になります。
- 歩行距離: 居室から直通階段までの歩行距離が、基準値を超える場合は、直通階段を複数設置する必要があります。
1. 用途による直通階段の設置義務 (令121条)
令121条では、用途別に、直通階段の設置が義務付けられる建築物が定められています。
それぞれ、階数や面積による条件も細かく規定されているため、法令集で確認しながら整理しておきましょう。
主な用途と設置基準
- 劇場、映画館、公会堂: 客席がある場合、規模に関わらず直通階段が必要となります。
- 百貨店、物品販売業を営む店舗: 売り場面積が1500㎡を超える場合、2以上の直通階段が必要となります。
- 病院、診療所: 病室の床面積の合計が50㎡を超える場合、2以上の直通階段が必要となります。
- ホテル: 宿泊室の床面積の合計が100㎡を超える場合、2以上の直通階段が必要となります。
- 共同住宅: 居室の床面積の合計が100㎡を超える場合、2以上の直通階段が必要となります。
2. 規模による直通階段の設置義務 (令121条)
令121条では、規模によっても、直通階段の設置基準が定められています。
- 6階以上の建築物: 用途に関わらず、直通階段が必要となります。
- 5階以下の建築物:
- 直上階が避難階である場合、または直上階に避難上有効なバルコニーがある場合は、直通階段の設置は免除されます。
- 直上階の床面積が200㎡を超える場合、2以上の直通階段が必要となります。
3. 歩行距離による直通階段の設置義務 (令120条)
令120条では、居室から直通階段までの歩行距離の基準が定められています。
歩行距離が基準値を超える場合は、直通階段を複数設置することで、避難経路を確保する必要があります。
歩行距離の算定方法
- 原則: 居室の最も遠い部分から、直通階段までの歩行距離を測ります。
- 内装制限: 主要構造部が準耐火構造または不燃材料で造られている場合は、歩行距離の基準値に10mを加算することができます。
- 高さ制限: 15階以上の建築物は、歩行距離の基準値から10mを減算する必要があります。
- 重複距離: 2つの直通階段の歩行距離が重複する部分(重複距離)は、歩行距離の1/2以下にする必要があります。
試験対策ポイント
- 歩行距離の算定は、上記のポイントを踏まえ、複雑な形状の建物でも正確に計算できるよう練習しておくことが重要です。
- 特に、内装制限や高さ制限による加算・減算は、忘れやすいポイントなので注意が必要です。
- 重複距離についても、図などを用いてイメージしながら理解しておきましょう。
まとめ|直通階段と歩行距離をマスターしよう!
直通階段と歩行距離は、避難経路設計において重要な要素であり、二級建築士試験でも頻出テーマです。
今回の内容を参考に、法令集と過去問を有効活用しながら、しっかりと理解を深め、試験本番で自信を持って解答できるように準備しておきましょう!