二級建築士試験において、建物の防火性能に関する知識は必須です。特に、 防火地域 や 準防火地域 における建築物の規制は複雑で、多くの受験生が苦労するポイントとなっています。
今回は、 耐火建築物 、 準耐火建築物 、 防火構造 といった建築物の構造基準と、 防火地域 、 準防火地域 における規制の関係性を整理し、さらに試験によく出るポイントや間違えやすい点などを詳しく解説していきます。
なぜ防火性能は重要?
建築基準法では、火災による被害を最小限に抑え、人命や財産を守るため、建物の防火性能に関する様々な基準を定めています。
特に、市街地では、建物が密集しているため、ひとたび火災が発生すると、 延焼 によって被害が拡大する危険性があります。
そのため、防火地域や準防火地域では、建物の構造や防火設備について、より厳格な基準が設けられています。
防火地域・準防火地域とは?
防火地域と準防火地域は、 都市計画法 に基づき指定される区域で、市街地における火災の延焼を防止し、安全な街づくりを目的としています。
- 防火地域: 火災の危険性が高く、延焼を防ぐために特に厳格な建築規制が適用されます。
- 準防火地域: 防火地域よりも火災の危険性が低い地域で、比較的緩やかな建築規制が適用されます。
建築物の構造基準|耐火・準耐火・防火構造
建築基準法では、建物の防火性能に応じて、 耐火建築物 、 準耐火建築物 、 防火建築物 の3つの構造基準を定めています。
1. 耐火建築物 (法2条5号)
- 定義: 火災時に一定時間、火災の拡大を防ぎ、倒壊しない構造の建築物。
- 構造基準: 主要構造部を 耐火材料 で造り、 防火区画 を設けるなど、 令107条 で定められた技術的基準に適合している必要があります。
- 耐火時間: 主要構造部の耐火時間は、 1時間、2時間、3時間 の3段階に区分されています。
- 例えば、柱や梁は3時間、床や屋根は1時間といったように、部位によって必要な耐火時間が異なります。
- ポイント:
- 耐火建築物は、防火性能が最も高く、火災による被害を最小限に抑えることができます。
- 防火地域や準防火地域では、一定規模以上の建築物は、原則として耐火建築物とする必要があります。
2. 準耐火建築物 (法2条6号)
- 定義: 耐火建築物よりも耐火性能は劣りますが、火災の延焼を遅らせる効果があります。
- 構造基準: 主要構造部を 準耐火構造 にするか、または 令108条 で定められた技術的基準に適合させる必要があります。
- 準耐火構造: 火災時に一定時間、火災の拡大を防ぐ構造。耐火構造よりも耐火性能は劣りますが、建築コストを抑えることができます。
- 令108条の技術的基準: 主要構造部を不燃材料で造り、開口部に防火設備を設けるなど、延焼防止のための措置を講じることで、準耐火建築物と同等の性能を確保することができます。
- ポイント:
- 準耐火建築物は、耐火建築物と防火建築物の中間に位置する構造基準です。
- 防火地域や準防火地域では、一定規模以下の建築物や、特定の用途の建築物は、準耐火建築物とすることができます。
3. 防火建築物 (法2条7号)
- 定義: 火災時に、隣接する建築物への延焼を防止するための構造。
- 構造基準: 外壁、軒裏などを 防火構造 にする必要があります。
- 防火構造: 火災時に、隣接する建築物への延焼を防ぐ構造。具体的には、外壁や軒裏を不燃材料で造ったり、開口部に防火設備を設けたりするなどの措置が求められます。
- ポイント:
- 防火建築物は、3つの構造基準の中で最も防火性能が低い基準です。
- 防火地域や準防火地域以外の地域では、小規模な建築物は、防火建築物とすることができます。
特殊建築物と防火地域・準防火地域の構造基準
特殊建築物は、防火地域や準防火地域に関係なく、 法27条 と 別表1 に基づいて、耐火建築物とする必要がある場合があります。
法27条と別表1
- 原則: 別表1に掲げる用途の特殊建築物は、原則として耐火建築物としなければなりません。
- 規模: 別表1では、用途ごとに、階数や床面積などの規模によって耐火建築物とする基準が定められています。
- 例外: 別表1の1号~4号に掲げる用途の特殊建築物で、階数が3階以下、かつ、延べ面積が200㎡未満のもので、かつ、自動火災報知設備を設置したものは、耐火建築物としなくてもよい。
特殊建築物と防火地域・準防火地域の組み合わせ例
- 防火地域内の劇場: 劇場は別表1に掲げる用途であり、規模に関わらず耐火建築物とする必要があります。
- 準防火地域内の3階建て共同住宅: 共同住宅は別表1に掲げる用途ですが、3階建てで延べ面積が一定以下であれば、準耐火建築物とすることができます。
試験によく出るポイント&間違いやすい点
- 防火地域と準防火地域における木造建築物の規制
- 防火地域: 原則として建築できません。ただし、2階建て以下で、延べ面積が500㎡以下の場合は、準耐火建築物とすることができます。
- 準防火地域: 階数が3階以下で、かつ、延べ面積が500㎡以下の場合は、準耐火建築物としなくてもよい。ただし、この場合でも、外壁は耐火構造としなければなりません。
- 延焼のおそれのある部分: 隣接する開口部間の距離が一定以上離れている場合は、延焼のおそれがないとみなされ、防火設備を設ける必要はありません。この距離は、建物の構造や用途によって異なります。
- 耐火時間: 耐火建築物の主要構造部は、部位によって必要な耐火時間が異なります。例えば、柱や梁は3時間、床や屋根は1時間など。
- 準耐火構造と令108条の技術的基準: どちらも準耐火建築物と同等の性能を確保するための基準ですが、構造や防火設備の要件が異なります。
- 防火設備と特定防火設備: 防火設備は、延焼のおそれのある部分に設置するもので、特定防火設備は、防火区画に設置するものです。必要な耐火時間が異なります。
- 既存不適格建築物の増築: 既存不適格建築物を増築する場合は、増築部分については改正後の基準に適合させる必要がありますが、一定の条件を満たす場合は、増築部分にも既存不適格建築物に関する規定を適用することができます。
まとめ|防火に関する知識をマスターしよう!
防火に関する規定は、建築基準法の中でも特に複雑な部分の一つですが、試験対策として、また建築士としての実務においても、非常に重要な知識です。
今回の内容を参考に、法令集と過去問を有効活用しながら、しっかりと理解を深め、試験本番で自信を持って解答できるように準備しておきましょう!